
Episode
動物セラピーに携わるまでの
エピソード
私の家には、小さい頃から猫がたくさんいました。
おそらく常に10匹以上。何度も出産や死に立ち会いました。話さない子供だった私は、大勢の猫たちがいる事で安心して生きていられたのだと思います。
それから服飾の学校へ行ったり就職をしたりで、猫がいない期間もありましたが、ある時、猫を飼う事にしました。その子は、きな粉色の小さな女の子でした。兄弟猫とは遊ばずに、人間となら遊ぶ猫。私が初めて会った時も、他の猫が遊んでいるのをよそに、小さな出窓とレースカーテンの間にちょこんと座って、こちらを眺めていたのを覚えています。
私はその子に、キナコ、と名付けました。
赤い首輪がよく似合う子でした。
それから12年間もの間、一緒に暮らしました。
そして、2020年の6月、夏至の日に亡くなりました。
私はキナコを心から信頼し愛していて、今でもそうです。亡くなる前は毎日施術をしました。いろんな方にもしていただいたり、病院にもお世話になりました。
その時期、私はかなりナイーブになっていたというのもありますが、獣医さんに言われた言葉で深く傷つき悩みました。キナコが病気になったのは自分のせいだと、いつも責めていました。
多くの方による施術のなかで、キナコがすでに、自分で肉体から離れる事を決めている、ということが分かりました。私を今の主人に託すという内容もありました。私が結婚したのは2020年5月。その頃からキナコの体調が悪くなったと感じていたので、全てはキナコの計画通りだったのかもしれません。
今日亡くなってもおかしくないと言われた日から、2週間一緒にいられました。
多分、私の心の準備が出来るのを待ってくれていたんだろうと思います。
もうほとんど食べられなくなっていましたが、亡くなる前日、焼いたホッケをすごく美味しそうに食べました。最期だからと、いつもはあげなかったカスタードクリームも差し出すと、美味しそうに舐めました。
食べてくれる事がこんなに嬉しいというのを、この時に初めて知りました。生きる、ということ。死ぬ、ということ。命とは何か。それらの真理を身をもって、私に伝えてくれました。
キナコは、その翌日の夕刻、私が少し目を離した隙に、静かに亡くなっていました。
キナコと、約束した事があります。
動物を助けること、施術をしていくこと。
動物が病気になったり亡くなる時に、その飼い主さんの心を助けること。人間という動物、猫という動物、それ以外の動物。種族を超えた絆があり、その絆へ施術をする、ということ。
ずっと前に、キナコが私の仕事のパートナー、というのが施術で出てきた事があります。
私はずっと、キナコを守っているつもりでしたが
お母さんは、私ではなくキナコの方だったみたいですね。
私にとって『動物と人の心と体のセラピー』は、
「約束」であり、「願い」です。
かつての私と同じように、動物の病気や死、ペットロスと言われる症状、抜け出せない心の苦しみに悩まされている方たちと、そこにいる動物たちの健康と幸せをサポートして行きたいと考えています。
ラトレアオーガニクス 光田恵美